CASE01 日経TESTを進級・卒業要件に
学生たちの実力を担保

長崎県立大学 地域創造学部 教授 鳥丸 聡氏
学生支援部 学生支援課 教務グループ 課長補佐 吉田 利通氏
学生支援部 森田 雅美氏
長崎県立大学

長期インターンシップや海外企業での研修など、ビジネスに直結するカリキュラムにより高い就職率を誇る長崎県立大学。同大学の経営学部と地域創造学部では、2016年より「日経TEST」を進級や卒業の要件として活用する。両学部では進級要件の1つとして「日経TEST300点以上」、経営学部経営学科と地域創造学部の公共政策学科と実践経済学科では卒業要件の1つとして「日経TEST430点以上」を設けている。

目的
  • 学生たちに社会の出来事や経済動向を掴む力を養ってもらう
  • 進級・卒業要件としての第三者評価
  • 大学で得た実力を示す明確な「武器」を持って社会に出てもらう
課題
  • 学生たちのマスメディア離れ
  • 自ら求め修める「学修力」

学生たちの実力を示す
第三者評価として活用

活用内容

経営学部と地域創造学部の進級要件の1つとして「日経TEST300点以上」、経営学部経営学科と地域創造学部公共政策学科と同実践経済学科では卒業要件の1つとして「日経TEST430点以上」を設けている。2016年より導入し、約8年間で6544人が受験(23年10月末時点)。

長崎県立大学 ご担当者様

新聞から社会課題を発見し、
多面的な思考ができる人材を育成

卒業要件として設定することで、
就職活動や社会に出る際に
個人の実力を示す
明確な証明書にもなると考えています。

日経TESTの受験者は企業人大半を占める中、
大学のカリキュラムとして取り組む
狙いについて教えてください。

鳥丸氏 狙いは大きなテーマとして2つあります。1つは新聞やテレビなどのマスメディア離れが著しいいまの学生たちに、社会の出来事や経済動向を掴む能力を身に付けてもらうことです。彼らのスマートフォンに表示されるお勧めニュースは世界の出来事の一部でしかなく、例えば新聞紙面の中に掲載されている様々なニュースの中から、自ら興味を持って情報をキャッチアップしたり、そこから社会課題を発見できる力を養ってもらいたいというのが大学側の願いです。
2つ目は第三者評価です。「日経TEST430点以上」は日本を代表する新聞社が担保する客観的評価であり、それを卒業要件として設定することで、就職活動や社会に出る際に個人の実力を示す明確な証明書にもなると考えています。企業に就職すれば時事問題に関心を持たざるを得ない環境になりますが、この卒業案件をクリアしている学生たちはもうその習慣が身に付いているという証にもなります。

インタビュー画像

ハイスコアの学生は
社会課題を把握し解決に挑む

600点以上のハイスコアを取った
学生たちは
自ら卒業論文のテーマを決め、
レジュメも用意してから相談に来ます。

学生たちは4年間、どのように
「日経TEST」に取り組んでいくのでしょうか。
また、高得点の学生には
どのような傾向が見られますか。

鳥丸氏 経営学部と地域創造学部では、1年生から『新聞で学ぶ経済』という授業で早い段階から新聞を読み込んで活用することになります。入学当初は大学入学共通テストで「政治・経済」を選択したか否かでどうしても学生たちの知識に差があるため、1年目の学生たちには新聞から興味のある分野の「推し面」を決めて情報を定点観測することから始めるよう薦めています。一つの分野のニュースや情報を追うようになれば、次第に他の面の情報との関連にも気付き始め、エネルギーの問題のように世界の様々な出来事が身の回りの変化として関連付けて考えられるようになります。
共通点として大きな変化が見られるのは「日経TEST」で600点以上のスコアを取る学生たちです。多くの学生たちが教授と相談しながら卒業論文のテーマを決めるなか、600点以上のハイスコアを取った学生たちは自らテーマを決め、レジュメも用意してから相談に来ます。彼らは社会が抱える課題を把握していて、自分が進めてきた研究テーマと関連付けながらその解決に挑もうとします。
ボーダーラインである430点以下の学生を見ると、「日経TEST」のスコアと大学の成績には相関関係は見られませんが、600点以上の学生は大学の成績も良く、一流企業や高等裁判所、県庁などに就職しています。

インタビュー画像 インタビュー画像

「日経TEST」が
進級や卒業の要件として導入された
経緯について教えてください。

吉田氏 大学としては、2016年度の学部学科再編を契機に、学生たちが大学で何を学んだかを示す分かりやすい明確な「武器」を持って社会に出てほしいという方針から、経営学部経営学科及び地域創造学部において、前身だった経済学部のゼミの多くがすでに「日経TEST」を取り入れていたこともあり、それを進級・卒業要件に設定することになりました。役員選定にも使われる「日経TEST」であれば就職の際、企業の人事担当者の方々は学生たちの実力を評価しやすいと考えています。また、経営学部国際経営学科及び国際社会学部では英語選択者はTOEIC®730点、中国語選択者は中国語検定2級を卒業要件にしていますし、その他の学科でも同様に明確な資格試験等を設定しています。

森田氏 「日経TEST」が進級・卒業要件になった時、学生たちにできるだけ新聞を手に取って読んでもらえるよう学内には、図書館以外にも「日経新聞閲覧コーナー」を設置し、コピーもできるようにしました。なかには卒業要件をクリアしたら新聞を読まなくなる学生もいるので、学内データベースよりWeb上で日経新聞の記事が確認できるシステムも用意するなど、いつでも新聞を読める環境を整えながら、時事問題と向き合う習慣を続けてもらえるようサポートしています。

インタビュー画像 インタビュー画像

主体的に学ぶことの意義を見つける
原動力

「日経TEST」が主体的に学ぶことの
大切さを知る
1つの原動力として
機能してくれることを期待しています。

「日経TEST」を通じて、学生たちに
どんな能力を養ってほしいとお考えですか。

鳥丸氏 時事やニュースとしての知識を得るだけでなく、多面的な思考を備えてもらうことが一番の願いです。「日経TEST」の出題傾向が毎回変わるように、社会は常に変化しています。例えば、最近話題の「アジャイル経営」のようにソフトウエア・アプリケーション開発についての視座がなければそのノウハウは経営に生かすことができません。こうしたトレンドを追うことで様々な分野に視野が広がり、あらゆる情報を結び付けて考える能力が身に付けば、イノベーション創出が実現できる人材へと成長できるはずです。
新聞を読む習慣が身に付いても、情報の取り方は偏ってしまいがちですから、私自身も定期的に「日経TEST」を受験しながら、トレンドや社会の流れを把握しておくように心がけています。学生たちにも卒業してからもできるだけ続けるよう勧めています。
また、「日経TEST」を採用する大学間で競い合うことや交流することも視野を広げたり、新たな視座を持つチャンスにもなると考えています。他の大学との交流が刺激になり、「日経TEST」に取り組むゴールは進級や卒業ではなく、いまを生きる自分たちの未来を描くためなのだということに気付くきっかけにもなるでしょう。
大学での学びとは、教師から与えられる「学習」ではなく、自ら求め修める「学修」です。「日経TEST」がそうした主体的に学ぶことの大切さを知る1つの原動力として機能してくれることを期待しています。

インタビュー画像
一覧を見る