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「一昔前の話ですが、サムスン電子の李健熙会長が三洋電機の井植敏会長(当時)に、人材育成にどのくらいの金額をかけているのかと尋ねた。井植会長がまごついていると、李健熙会長は『ウチは研究開発費と同じくらい投じている』と話して、井植会長は仰天したという。じゃうちもやらないと考えたが、そうこうしているうちに歴史はああなった」。伊藤教授は、2008年にパナソニックの子会社となった三洋電機を題材に、日本企業の人材育成の遅れについて指摘する。
かつての三洋電機はサムスンの先生役だったが、立場は逆転、半導体を核とする世界的な電機メーカーに躍進した。日本の電機大手は海外市場を席巻したが、現在は劣勢だ。最大の理由の一つが経営人材の力不足だという。「日本の会社の社長は60代ぐらいで、4年で定期的に交代するケースもある。年齢も高く、肉体的にきつくなり、戦略を立てるどころじゃない」と伊藤教授はいう。
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八木氏は「日本は残念な会社が多い。次期社長を打診されて『青天のへきれき』という人がいるがこれがおかしい。社長になる心構え、準備をしてこなかったということになる。トップのポストは自分で取りにいくものだ」という。
現在、日本を代表する大手企業は、どのような経営人材の育成プログラムを進めているのか。海外売上比は約7割とグローバル企業に成長したAGC旭硝子。石村会長は、「将来のトップリーダーの後継者は、様々なポストに配置換えして育てる考えだ。取締役は社内が7人、社外が3人で、指名委員会では社外の江川雅子氏(一橋大学大学院教授)を委員長に据え、第3者の客観的な立場で選ぶ体制としている」という。ただ、課題は少なくない。「各部門は優秀な人材を抱え込み、他部門に出そうとしない。そんな場合は、トップ自らが口を挟み、別の部門に配置転換するように指示している」という。