おしゃれな男女の会話もリスニング教材になる
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TOEICのリスニング問題には「男女の会話」も頻出します。そうした点から、男女の名優が登場する映画は、とっておきのリスニング教材です。
今回は、バットマンとスーパーマンの対決に加えてワンダーウーマンも活躍する全米で大ヒット中の映画「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生」を取り上げます。
オーソン・ウェルズを生んだアメリカ・ウィスコンシン州出身の天才監督ザック・スナイダーは、バットマンのクールな情熱、スーパーマンの人間味ある正義感、ワンダーウーマンの大胆不敵さを見事に演出しています。
はまり役の出演者たち
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1年かけて体を鍛えた名優ベン・アフレックは、バットマンを演じるのは今回が初めてですが、完璧なはまり役です。また、前作に続いてスーパーマン役を演じる名優ヘンリー・カビルは、辣腕女性記者ロイス・レインに愛を語るシーンで映画史上に残る名演技を見せています。
そして、アメコミ・ファン待望のワンダーウーマン役には、名優ガル・ガドットが新登場。その最高に斬新なワンダーウーマン像はアメリカで絶賛を浴び、現在、ワンダーウーマンが主役の映画も進行中です。
共演者たちも豪華絢爛です。
アカデミー主演男優賞ノミネート歴を持つジェシー・アイゼンバーグが敵役レックス・ルーサーを、アカデミー主演女優ホリー・ハンターがレックスやスーパーマンと対峙する上院議員フィンチを、アカデミー主演女優賞ノミート歴を持つダイアン・レインがスーパーマンの地球での育ての母を、そして、アカデミー主演男優賞受賞歴を持つジェレミー・アイアンズがバットマンを長年支えるアルフレッド役を演じています。
数字の聞き取りは重要
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見どころは、めったに笑みを見せない、渋くてクールなバットマンことブルース・ウェインが、古美術に造詣の深い謎の女性(実はワンダーウーマン)からの反撃に思わず笑みをもらすシーンです。
まずは、素性を隠すため、私生活でプレイボーイを演じているブルースのセリフから始まる「最高におしゃれな男女の会話」です。
(ブルース) | I bet with that dress, 9 out of 10 men would probably let you get away with anything. |
(ダイアナ) | But you are the tenth? |
(ブルース) | …I'm guessing I'm the first… to see through that babe-in-the-woods act. You don't know me, but I've known a few women like you. |
(ブルース) | 君のドレス姿に接したら、男どもの10人のうち9人は、君がどれほど大事な物を持ち去ろうとも許してしまうだろうね。 |
(ダイアナ) | でも、あなたは10番目の許さない男ってわけ? |
(ブルース) | ……思うに僕は、その最初さ……といっても許すんじゃなく、世の中にポッと出の可愛い子ちゃんがしでかすことを万事見通すという意味の最初だけどね。君は僕を知らないが、僕は君のような女性のことはこれまで少しは知ってるんだ。 |
ここでは、「9 out of 10」の数字を聞き取ることが重要です。数字の聞き取りは、TOEICリスニングでもビジネスでも必須です。
ブルースが語る「see through that babe in the woods act」は口語表現で、直訳すれば「森のなかの可愛い子ちゃんの振る舞いを見通す」となりますが、ここでは上記の意味になります。「see through~」の直前、名優ベン演じるブルースが絶妙な「間」を置くので、一瞬「最初に許す男」という意味に思えてしまうところは、まさに聞きどころです。
ワンダーウーマンの反撃に思わず笑みが
さて、そんなブルース(実はバットマン)を、豪奢なドレス姿のダイアナ(実はワンダーウーマン)が完全にやり込めます。次は、さすがのブルースも、してやられたとばかりに思わず微笑んでしまう名セリフです。ダイアナはささやくように語ります。
You know, it's true what they say about little boys. Born with no natural inclination to share.
(ねえ、可愛い男のお子ちゃまたちについて人々が語っていることって本当よ。男の子たちって、赤ちゃんのときから分かち合う気が全然ないのよ)
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TOEIC頻出英単語inclination(インクリネイシァン)は「ネ」の箇所にアクセントが置かれ、意味は「性向、性癖」です。shareは外来語の「シェア」ですが、ここでは「分かち合う」という意味です。
ある重要なものを横取りされたうえに、可愛い子ちゃん扱いした意趣返しでお子ちゃま扱いされ、思わず笑みをもらしてしまうブルースですが、ここにはもうひとつ、シナリオ上の意味もあります。それは、「お子ちゃまたち」と複数形にすることで、バットマンやスーパーマンなど、この映画に登場するヒーローたちを女性目線でおしゃれに皮肉っていることです。まさに大胆不敵なワンダーウーマンです。
こんなシーンもTOEICに役立つ
さて、ダイアナがホテルに戻ると、ブルースからメールが届きます。パソコンの画面には、「男の子たちも(大切な情報は)分かち合うよ」といった表題が……。その瞬間、このメールの表題にパッと目がいくかどうかは、TOEICのリスニング問題で複数の選択肢のなかから正解を見つけるのと同じです。
アメコミ・ファンならではの見どころも
最後にひとつ、アメコミ・ファンならではの見どころも紹介しましょう。それは、敵役レックスのパーティーでスピーチを聞くときのダイアナ(ワンダーウーマン)です。レックスが得意そうにギリシャ神話のゼウスについて語りだすと、とことん、うんざりした表情を見せています。アメコミでは、ワンダーウーマンはゼウスの身内だからです。
ワンダーウーマンもこんな表情を見せることがあるのかと、日ごろの英語学習の疲れも一気に吹っ飛んでしまう名シーンです。
作品名:『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』
公開日:3月25日(金)3D/2D/IMAX 公開
監督:ザック・スナイダー
脚本:クリス・テオ/イビッド・ S・ゴイヤー
出演:ベン・アフレック、ヘンリー・カヴィル、ジェシー・アイゼンバーグ、ジェレミー・アイアンズ、ガル・ガドット 他
原題:BATMAN v SUPERMAN DAWN OF JUSTICE
提供:ユニバーサル映画/製作:チャールズ・ローブン、デボラ・スナイダー
配給:ワーナー・ブラザース映画
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湯浅 卓(ゆあさ・たかし)
国際弁護士
1955年11月24日東京生まれ。港区立白金小学校、麻布中学・高校を経て、東京大学法学部卒業後、UCLA、コロンビア及びハーバードの各法律大学院に学ぶ。国際弁護士としての専門分野はウォール街の銀行法及びIT法の2つだが、ウォール街でのワシントン担当の実務も行う。ワシントンでは複数年にわたり、現地のアメリカ人法律大学院生2年生、3年生の「国際比較法」(4単位)を担当し、英語で授業や試験、採点を行ったこともある。書籍や論稿、並びに政府や地方公共団体、シンクタンクなどでの講演も多数。
TOEICは、アメリカの名門、Educational Testing Service(ETS)の登録商標です。本連載では、『TOEICテスト新公式問題集』(国際ビジネスコミュニケーション協会)を推奨します。