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白熱MBA講義

セブン&アイの鈴木会長退任劇を4つのなぜから考える

「カリスマ経営者の独裁的行動」の至近要因

 至近要因は、「カリスマ経営者の独裁的行動は、一体どんなメカニズムで実現しているのか」という問いになろう。

 カリスマ独裁が成り立つメカニズムを、鈴木氏が創業し深く関与したコンビニ事業を例にとって考えてみよう。コンビニ経営では、「この商品なら売れるのでは」というようなモデル仮説を立て、その仮説を実際に店頭で試して検証する。そして成功したモデルをチェーン全店舗に素早く展開する。これを短いサイクルで繰り返すことで、売上機会の取り逃がし(機会損失)と死に筋商品の在庫滞留(廃棄ロス)という2つのロスを最小化する。これを前提に「カリスマ独裁的行動」のメカニズムを考えると、以下の要因が考えられる。

(1)市場情報の集中:全国の個店での顧客・商品の動き、商品やキャンペーンの成功・失敗体験、顧客の潜在ニーズ、競合動向などの現場情報を本部に一元的に集中する。本部と店舗間に情報ネットワークを張り巡らし、リアルタイムで店頭情報を吸い上げ、経営トップに集約・報告される。
(2)店頭活動の指揮:店頭から吸い上げた市場情報を元に、次の瞬間(例えば翌週)どう店舗が動くべきか、判断し、その指示を店舗に伝える。本部で隔週に行われる全国店舗指導員(FC)会議で、経営者の基本方針(鈴木イズム)や成功モデルが繰り返し刷り込まれる。さらにFCが各店舗オーナーにそれを刷り込み、最終的には店舗オーナーが、鈴木氏と同じことを言う「金太郎飴」状態になる。
(3)判断機能の集中:トップの判断をサポートするのは、記憶と学習の機能である。鈴木氏は、セブンイレブン創業以来の現役メンバーであり、コンビニ運営の「生き字引」である。さらに社員の誰よりも仮説と検証のサイクル学習の累積経験が豊富である。
(4)上位下達の強制力と「信者」型社員:トップの指示が店頭現場に徹底されるために、社員が指示に従わねばならない。鈴木イズムに忠実でかつ高業績を上げられる社員を評価・登用する一方、そうでない社員の評価を下げるなどの処遇を行い、トップは忠実な自分の「信者」たちに囲まれていただろう。店舗オーナーにも、鈴木イズムの刷り込みと厳しい業績管理で、方針徹底がされていたはずである。
(5)成功の持続:経営トップの地位は、成功実績の持続によってのみ、創業家など主要ステークホールダーによって支持される。幸い、セブンイレブンが、鈴木氏の戦略が奏功し、増収増益基調が持続する限り、その地位も保たれる。

「カリスマ経営者の独裁的行動」の究極要因

 究極要因は、「カリスマ経営者の独裁的行動は、競争上、なぜ有利なのか」という問いになろう。

 これは、カリスマ的経営者が独裁的行動をとる企業と、多数のリーダーが集団的に意思決定行動をする企業とを比較してみると、明らかだと思われる。

(1)意思決定スピードの速さ:コンビニのように、消費者の日々のニーズ変化に即応せねばならない事業にとって、朝令暮改どころか朝礼朝改的なスピードが決定的に重要である。カリスマ経営者が独裁的行動をとる企業は、そうでない企業に比べ、決定スピードは速く、変化への対応力も強い。
(2)方向転換の速さ:コンビニでは、成功商品の全店即時展開や失敗商品の即時引き上げなど、全店頭で商品鮮度を保つスピード格差が、企業の収益格差に直結する。カリスマ経営者の号令一下全社が一丸となって新方針を実行するので、チェーン全体の変身が速く、環境変化への適応力が高い。

 もちろん、トップが間違えるリスクもあるが、その修正スピードも速いので、小さな傷に止めてきたのではないか、と考えられる。

>> 「カリスマ経営者の独裁的行動」の系統進化要因

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