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財務分析は「図にする」のが早道 アップルの17年9月期は?

■図解分析の手順

 では、この貸借対照表と損益計算書の図をどのように見ていけばよいのでしょうか。財務諸表には事業の全プロセスであるお金を集める(Financing)→投資する(Investing)→利益をあげる(Earning)とういことが書かれているのですから、この図も事業のプロセスに従って見ていけばよいのです。

 まずは貸借対照表の右側です。ここにアップルがどうやってお金を集めてきたかが書かれています。株主資本(Stockholders’ equity)が35.7%ですから、他人資本(Borrowed capital)は残りの64.3%ということになります。

 貸借対照表の右側を見るとき、チェックしておいていただきたい所が2カ所あります。1カ所目は有利子負債(Interest bearing liabilities)です。有利子負債とは利子のある負債、つまり純粋な借金のことです。短期借入金、長期借入金、社債などです。貸借対照表の負債の中には純粋な借金ではない買掛金(Accounts payable)や未払法人税(Income tax payable)などが入っていますので、純粋な借金の額を右側に抜き出しています。

 チェックしておいていただきたい2カ所目は利益剰余金(Retained earnings)の額です。これは過去の利益の蓄積がおおよそわかるところです。

 私が財務諸表を見るときにまず目が行くのは、この有利子負債と利益剰余金の2項目です。有利子負債が少なく、利益剰余金がたくさん積み上がっている会社は、一般的には過去に良好な環境の中で経営してきたといえます。

 ただし、有利子負債が多くて、利益剰余金が少ない会社が一概に悪い会社とはいえません。比較的社歴が浅いけれど、M&Aなどで積極的な拡大戦略をとっている企業は、有利子負債が多くて利益剰余金が少ないのが一般的です。

 貸借対照表の右側をチェックしたら、次は貸借対照表の左側です。貸借対照表の左側には集めてきたお金が何に投資されているかが表れています。詳細な内容は実際の貸借対照表の数字を見なければわかりませんが、先ずは貸借対照表からその会社の金払いの良さや安定性を読み取ってください。

 つまり、貸借対照表の左右の流動(Current)と固定(Non-current(or Fixed))の線の位置関係のチェックです。右側の線が上にあり左側の線が下にあればあるほど、一般的に金払いもいいし会社の安定度も高いといえます。

 次にもう1点見ておいていただきたいのが自己資本比率(Equity ratio)です。アップルの場合は35.7%ですね。この数字は高ければよいというわけではありませんが、一般的には優良企業の多くは自己資本比率が高いといえます。

 まとめていえば、図の中の矢印で示した3本の位置関係のチェックです。これで会社のおおよその安定性がわかります。

 貸借対照表から会社の安定性や大まかな会社の状態をつかんだら、次は総資産(Total assets)をいかに効率よく使って売上高(Net sales)をあげているかを見てください。同じ資産を使ってたくさんの売上高を作れる会社もあればそうでない会社もあります。つまり、貸借対照表と損益計算書を結んだ線が、右肩上がりに急勾配であればあるほど資産を効率よく使っているといえます。これが総資産回転率(Total assets turnover)のことです。

 ちなみに、日本の上場企業の総資産回転率の平均は0.8程度です。ただ、この総資産回転率は業界によって大きく差がありますので、平均が0.8だからといってあまり特別の意味があるわけではありません。

 総資産回転率の次に見るのは利益率です。これは損益計算書の中で営業利益(Operating income)や当期純利益(Net income)の線が上にあればあるほど利益率が良いということになります。

 このように貸借対照表と損益計算書を図にすることにより、前回のコラムで説明した分析項目が、それぞれの分析指標の数字を計算しなくても一目で確認できるのです。

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