出世ナビ 記事セレクト

ダメ会議撲滅で変える働き方

ダメ会議は決め方からダメ バクチにしない意思決定法(堀 公俊)

第9回 まずやるべきなのは「決め方を決める」

■だったらコインを投げて決める?

 会議で多いのは、誰かが提案を持ちこみ、「採用するか否か?」をみんなで議論するスタイルです。提案を通したい人はメリットや効果などのプラス面を力説し、通したくない人はデメリットやリスクといったマイナス面を指摘。賛否両論の中から合理的な結論を得ようとします。

 ところが、これではよい結論が導けないことをご存知でしょうか。米オハイオ州立大学ビジネススクールの元教授P.ナット氏の研究を紹介しましょう(チップ・ハース&ダン・ハース著『決定力』)。

 氏は、30年間のキャリアを通じて、企業、非営利組織、政府機関のさまざまな意思決定の事例を集めました。その上で、「意思決定によって採用された選択肢は結果的に成功したか? 成功は持続したか?」を168件の事例について調べました。

 すると、『「~べきか否か」形式の意思決定の52パーセントは、長期的に見て失敗している。一方、選択肢が二つ以上ある意思決定は32パーセントしか失敗していない』という興味深い結論を得たのです。言い換えると、「~べきか否か」形式の意思決定では、うまくいくかどうかは半々。だったら、コインを投げて決めてもいいんじゃないでしょうかね。

 なぜ、こんな結果になるのでしょうか。「一つの選択肢しか見ていない経営者は、『この選択を成功させるには? 同僚の指示を得るには?』とばかり考えている」「『もっといい方法は? 他に何ができるだろう?』といった重要な問いはすっかり忘れられている」というのが氏の分析です。

■視野狭窄に陥らないために

 つまり、「物事を決めるには、選択肢の幅が大切だ」という話です。

 実際に、家や車といった大きな買い物をするときに、多くの方はいくつかの商品を比較・検討をして、その中でベストなものを選択しようとします。一つの商品だけを見て、「買うべきか否か?」を考える人は珍しいのではないかと思います(結婚の場合はありえますが、そもそも伴侶を決めるというのは合理的な選択ではないので……)。

 それは、複数案を考察することで、狭い考えに陥ることが防げるからです。相互に比較することで、検討の質も高まってきます。

 言い換えると、常に「対案を考える」ことが大切なわけです。そのため、「反論するときは対案を提示する」「ない場合は賛成とみなす」ことを会議のルールにしている会社もあるくらいです。粘り強く他のアイデアを検討する姿勢が、よりよい結論を生み出します。

 「この案を採用しないとしたら、他にどんなやり方が考えられますか?」

 複数といっても二つ、三つあれば十分。あまりたくさんあると迷ってしまい、決められずに先送りしてしまうからです。人は複雑すぎることに対しては思考停止する癖があり、注意が必要です。

■何を基準にして判断をするのか?

 意思決定でもう一つ大切なのは、「決め方を決める」ことです。

 たとえば、複数の選択肢の中から選ぶなら、選択の基準を議論するべきです。

 「何を大切にして決めたらよいのでしょうか? そこを話し合いませんか?」

 たとえば、「会社のミッションに合致しているかどうかで選ぶ」「お客様の満足を一番に考える」「多少の危険は冒しても効果の大きいほうにする」といったように。

 他にも、実現性、新規性、波及効果、リスクなど、決定の基準はいろいろあります。それも、時間(長期/短期)や空間(部分/全体)を見る視野によって判断が変わってきます。キッチリやりたければ、複数の基準をミックスして、総合的に判断する方法もあります。

 「新規性を第一に考えつつも、最もリスクが低いほうを選ぶことにしませんか?」

 いずれにせよ、何を基準にするかを議論すれば、評価尺度がそろい、統一した判断がしやすくなります。納得感のある判断ができ、第三者にも選んだ理由が説明しやすくなります。後で決定の良しあしを吟味する材料にもなります。

 「前回は会社の方針を優先しましたが、今回は顧客の満足を第一に考えて決めてみませんか?」

■いろんな決定方式を使い分けよう

 決定方式を決めるのも重要な選択です。

 多数決は、手っ取り早くてシャープな結論が得られるものの、負けたほうの納得感が下がるというデメリットがあります。実行する段になって、「やったふり」「やっているつもり」が横行する恐れがあります。「評決する合意をどう取るか?」というテクニカルな問題もあります。

 全員一致(コンセンサス)は、満足度が高くてスムーズに実行に移すのはよいのですが、全員が相乗りできる案をつくるのに時間がかかります。意固地な人がいるとゴネ得になる恐れもあります。抽象的な結論に落ち着く場合もあり、エッジの効いた決定には向きません。

 リーダー(もしくは一番の利害関係者)への一任は、責任の所在を明らかにする上では好ましいものの、独裁的になってしまうと、みんなで話し合う意味がなくなってしまいます。決まらなかったときの最終手段として取っておくという手もあります。

 いずれにせよ、決め方を決めるのは、会議の早い段階でやったほうが効率的です。後になって決めようとすると、それぞれの思惑が交錯してしまい、あるべき姿の議論になりません。

 ただし、様子が分からないのに決め方の同意を取ると、最後になって「はめられた!」と文句が出る恐れがあります。信頼を失わないよう、状況を見て使うようにしましょう。

◇   ◇   ◇

堀 公俊(ほり・きみとし)
ダメ会議は決め方からダメ バクチにしない意思決定法(堀 公俊)
 日本ファシリテーション協会フェロー、日経ビジネススクール講師
 1960年神戸生まれ。組織コンサルタント。大阪大学大学院工学研究科修了。84年から大手精密機器メーカーにて、商品開発や経営企画に従事。95年から経営改革、企業合併、オフサイト研修、コミュニティー活動、市民運動など、多彩な分野でファシリテーション活動を展開。ロジカルでハートウオーミングなファシリテーションは定評がある。2003年に「日本ファシリテーション協会」を設立し、研究会や講演活動を通じてファシリテーションの普及・啓発に努めている。
ダメ会議は決め方からダメ バクチにしない意思決定法(堀 公俊)
 著書に『ワンフレーズ論理思考』『ファシリテーション・ベーシックス』『問題解決フレームワーク大全』(いずれも日本経済新聞出版社)など多数。最新刊は『会議を変えるワンフレーズ』(朝日新聞出版=写真)。日経ビデオ『成功するファシリテーション』(全2巻)の監修も務めた。

  • よくわかる管理会計の基礎と実践

    会計の基礎知識を考える力にする続きを読む

  • 財務諸表分析と企業価値評価の基本

    企業価値向上の好循環を生みだす続きを読む

  • ファシリテーション能力開発

    ファシリテーションの第一人者がエッセンス・スキル・ノウハウを伝授続きを読む

バックナンバー

NIKKEI STYLE

最新記事一覧

おすすめの講座

  • 会社役員・幹部向けベーシックコース
  • 上司力養成講座特集
  • ビジネス基礎力特集
  • ビジネススキル再点検
  • 日経緊急解説Live!
  • 日経ビジネススクール アジア
  • 日本版エグゼクティブ研究会
  • お気に入り登録&マイページ便利な使い方